伊勢志摩のちいさな野外フェス「あのり拍子」の魅力。【Vol.1】

12月に入って、急に冬が本気をだしてきました。
今年は今までがすごく暖かかったので、寒さが身に染みますね…

さてさて先月の終わりにぼくたち夫婦は、三重県志摩市の端にあるちいさな港町「安乗」で行われたちいさな野外フェス「あのり拍子」に行ってきました。
きっかけはとあるアーティストの出演だったのですが、伊勢志摩の文化や人たちの愛があふれたすごく素敵なイベントでした。
「あのり拍子」を通して感じたことをつらつらと書いていきます。

初めての土地でのフェスは思いもよらぬオープニング

安乗神社の神主さんによる祈祷
あのり神社の神主さんによる祈祷のオープニングセレモニー

この日の安乗は、しっとりとした曇りの日。
ぼくたちはこの土地に来るのは初めてなので、はじめはいわゆる普通のエンタメ色の強いフェスなのかと思っていました。

13時からあのり拍子がスタートしたのですが、なんとオープニングセレモニーは安乗神社の宮司さんによる、あのり拍子の成功を願う祈祷式から始まりました。
海と灯台がある丘の上で、あのりにゆかりのある神社の宮司さんが祈祷をする。
それをお客さんもスタッフさんたちも一緒に静かに見守っていました。

ぼくの想像していたフェスとは違い、静かで荘厳なオープニングでいい意味でどんなイベントになるのかなぁと期待に胸が膨らみまくりで。笑
特に撮影NGというアナウンスもなく、皆さんおのおの音楽を聴いたり、写真を撮ったり自由に楽しんでいたのがとても印象的でした。

安乗神社は、周辺の神社を統合(神社合祀)され、明治41年に村社安乗神社となりました。その為、ここにはたくさんの神様が鎮座されています。

また、勝武の神様としてもたたえられております。1592~1593年頃、九鬼水軍を率いた九鬼嘉隆(くきよしたか)が安乗沖を航行していた際、風が止んで進行が出来なくなりました。その時に現在の安乗神社に参拝したところ、たちまち風が吹いて安全に航行を再開することが出来、大変武功をあげたと言われております。

https://anorhythm.jp/より引用

この日は夜中まで雨が降っていたらしく、ぼくたちが着いた時はまだ地面が湿っていたのですが、あのり拍子が終わるまで雨は降らずに夕方にはなんとも言えないキレイな夕日もみることができました。

各アーティストの「自由時間」

安乗神社の祈祷で幕があいたあのり拍子。
志摩市長のご挨拶(フェスに市長さんが来ていることにも驚きました)のあと、出演アーティストによる「自由時間」が始まりました。

「ライブ」や「演奏」とかで始まるんじゃなく、「自由時間」というのがなんとも面白いですよね。

志摩市の突端に位置する安乗埼灯台から聞こえてくる「あのり拍子」

「あのり拍子」は、安乗の自然と伝統文化、人々の営みから生まれる安乗特有の自由なリズム。
安乗の地の魅力にインスパイアされた音楽とコンテンポラリーダンスを通して
「あのり拍子」を来場者に直接体感していただきます。

https://anorhythm.jp/より引用

出演アーティストはこの4名。

  • 角銅真実さん(音楽家、打楽器奏者)
  • 大友良英さん(ギタリスト、ノイズ、フリージャズ、ターンテーブル奏者)
  • 冥丁さん(音楽家)
  • 小暮香帆さん(ダンサー、振付家)

角銅真美「自由時間」

角銅真美さんの演奏
角銅真美さん

オープニングアクトは角銅真美さん。
会場の中央にステージはあったのですが、ステージではなく海の見える丘からトライアングルをたたく角銅さんを見つけて「あっもうはじまってたんだ!」
自由時間という名の演奏が始まりました。

角銅さんのミステリアスな音楽と世界観に浸っているとあっというまに30分が経ってしまいました。

大友良英「自由時間」

大友良英さんの自由時間
大友良英さん

大友良英さんと言えば、数々の映画音楽やドラマへの楽曲提供をされている方です。
あのNHKドラマ「あまちゃん」の音楽を担当したことでも有名ですね。

写真の通り、ギター1本で椅子に座って演奏していたのですが、あまちゃんのようなポップな感じではなく、大自然の中でのノイズまじりの即興演奏は、今まで聴いたことがない壮大な演奏でした。

大友さんの一人の演奏が終わった後に妻と無言で(え…すごかったよね…?)という謎のアイコンタクトをしてしまいました。笑

一人の演奏の後は、志摩で音楽活動と海女さんをやっている方とのセッションをされていたのですが、ぼくはというと、隣にいた安乗にずっと住んでいるというおばあちゃんと話が盛り上がってしまい、ちゃんと曲を聴けませんでした。笑(心残りがあるとすればこの部分を聴けなかったことかもしれません笑)

でも、おばあちゃんから元々この場所は小学校だったことや、いろいろな安乗の話を聞くことができてそれはそれですごく楽しかったです。
80歳を超えているとおっしゃっていましたがとてもお元気そうであのり拍子を楽しんでいる様子でした。

冥丁×小暮香帆「音楽とダンスのセッション」

ぼくたち夫婦が「あのり拍子」を知ったのは冥丁さんがこのフェスに出演することがきっかけでした。
冥丁さんの音楽がすごく好きで、いつか実際に見てみたいね〜といつも夫婦で話していたのですが、山口に移住した今年、その夢が実現しました!

プレイ中の冥丁さん
プレイ中の冥丁さん

安乗の伝統文化の人形芝居。
そのナレーションから始まったライブは、だんだんと日が落ちて暗くなっていくにつれて、自分が現実世界にいるのか、夢の世界にいるのかわからないようなとても不思議な感覚でした。
寝ている時に見る夢の中のような起きてるか寝ているかを意識していないような…

小暮香帆さんのダンス
小暮香帆さん

その音楽に合わせて踊る小暮香帆さんもすごく綺麗でした。
コンテンポラリーダンスをこの日初めて見たのですが、その場にいた人しかわからない空気感の中で、自然と身体が動いてフェスの会場全体を使った小暮さんのパフォーマンスに鳥肌が止まりませんでした。

あのりの大工さんの作ったdjブース
あのりの大工さんの作ったDJブース

また、この日のために作られたこのDJブースは、あのり有志会のメンバーの大工さんが作られたそうです。
大正時代から最近まで使われていた鉄格子を使い、解体した民家から譲り受けた欄干を使った「日本」を感じる素敵なブースでした。
冥丁さんの花魁という曲からインスピレーションを受けて製作したそうです。
ライトアップされたブースは本当に幻想的で綺麗でした!

ラストは3人のアーティストによる即興セッション

「あのり拍子」のラストを飾るのは、大友良英×角銅真美×小暮香帆による即興セッションでした。

3人のセッション
3人のアーティストによるセッション
たき火と安乗灯台
たき火と安乗灯台

昼間のすこしピリッとした世界観とは違う、ステージに座ってシャボン玉を吹いたり、口で音を出したりなんだか暖かい気持ちになる3人のアーティストによるセッションが始まりました。

さすがに海沿いのこの時間帯になると風が強いこともあってかなり体感温度は下がってきていたのですが、ドラム缶やたき火台に火が灯され、3人の楽器ではない物で奏でる暖かい音楽も相まって会場全体がほんわかした空気に包まれていました。

アンコールは、チンドン屋のように会場全体を音を鳴らしながら歩いて最後は志摩の暮らし食堂でみんなが志摩の食事を褒め称えるという地域のお祭りのようなフェスらしからぬ(かなりの褒め言葉として)盛り上がりでした。笑

「安乗の文化に触れる」とても貴重な体験。

この「あのり拍子」というイベントは、もちろん音楽だけではありません。
オープニングの安乗神社の祈祷からもわかる通り、安乗の伝統文化をすごく大切にしているイベントだったので、音楽だけではなく、伝統文化の人形芝居、志摩の海と生きている海女さんのお話、志摩の伝統食も楽しむ事ができました。

志摩の暮らし食堂
志摩の伝統食を提供してくれた志摩の暮らし食堂
安乗の伝統芸能「安乗人形芝居」
安乗の伝統芸能「安乗人形芝居」
ライトアップされた安乗灯台
ライトアップされた安乗灯台

個人的に、安乗の海と長年過ごしてきた海女さんのお話を聞けたことは自分の中ですごく大きな事でした。

いま思い出しても心にぐっと来る気持ちが蘇ってきます。
フェスに来て大事なことを忘れないようにスマホにメモをしたのは生まれて初めてでした。笑

安乗の昔と今、何十年も過ごしてきたから人たちから感じるおおらかさ、柔らかさはどこからくるんだろうなぁと、そんなことを考えながら聞いていました。

「あのり拍子」で過ごした夢のような時間

お昼の13時から始まって19時まで続いた「あのり拍子」。
会場の規模も大きくなく出演アーティストは4組と、決して多くはありませんでした。

ライブや大きなフェスなど何度か行ったことがありますが、個人的にはこの「あのり拍子」は今まで行ったイベントの中でも本当に来て良かったなぁと思えるイベントでした。

おまけにフェス終了後、ありがたいことに冥丁さんと少しお話する時間もさせていただきました!
お話するまでは、すごくクールな印象を持っていたのですが、とても物腰のやわらかい優しい方でした。
少しだけど音楽に対する気持ちも話してくれて、より一層冥丁さんの魅力がわかった一日でした。

思った以上に熱が入ってしまって、音楽のことだけでかなりのボリュームになってしまったので、音楽以外の「あのり拍子」のことは後日改めて記事にしようと思います。

この記事を書いた人

Takashi

山口県下関市出身。
フリーランスのデザイナーとして活動しています。
写真を撮るのが好きです。
2022年3月に山口市に移住してきました。
移住に関することや自分たちのライフスタイルなどを備忘録として残していきたいと思います。